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酔眼教師の乱雑日記

マチュア世代の意識と行動

50歳台以上の女性の意識と行動、とくに、ファッションに関する意識を中心に、細分化(グループ)して、50歳台では四つのグループ、60歳台では、二つのグループを見つけ出し、それぞれの特徴を示したものです。


マチュア世代の意識と行動
━━ファッションを中心に━━


1 研究の目的
従来の流通企業は、消費者との商品取引や情報交換を行う場としての「市場環境」(隣接的環境)から出発して、マーケティング・ミックスを組み立て行動した。その場合においては、市場環境の背後にある生活文化構造(本源的環境)は「経済的・社会的・自然的環境」として外生的変数としてとらえていた。確かに、需要が供給を上回る高度経済成長期のような場合には、流通企業は消費者との取引行動だけを対象としていたので、生活文化構造は所与と見なしても問題はなかった。流通企業は市場環境の動向にだけ注意を払っておればよかった。
しかし、急速な経済発展により、高度消費社会が実現し、グローバルなネットワーク社会が形成され、外国の生活文化の移入が容易になると同時に、経済が停滞期に入ると、市場環境の背後にある生活文化構造の活断層が活動をはじめ、生活文化度の変革が始まる。流通企業は市場環境対応行動から、生活文化構造の変革過程と新たなる生活文化度に対応する企業行動を創造していかなくてはならなくなる。
このような観点から現在の状況をみると、バブル経済崩壊後、商品流通の中で流通企業が優位を占める新しい市場形成へと向かいつつあるが、主導権を持った大規模流通企業においても販売額・利益額において対前年比割れの低迷が続いており、店舗の売却、人員の削減などのリストラクチャリングを進めている。
低迷の一因は、長期不況と将来の不透明感に伴う消費者の節約志向に求められることが多いが、それは必ずしも不況という経済情勢だけが原因ではなく、戦後五十数年の社会経済の変化を経て、消費者が単なる経済主体としての消費者から、社会・文化システムの中の行為者としての生活者へと変貌し、新しい生活文化度へと移行しつつあることに原因が求められるのではないかと考えられる。
生活文化構造は、価値観、生活意識、パーソナリティ特性、経済特性、地域性などの要因から構成されており、それぞれの世代が過ごしてきた時代背景、その時々の経験、現在の経済状況や家庭・生活環境などによって異なると考えられる。
このような問題意識のもとで、20歳以上の社会人の女性を対象として、生活実態、生活意識と関心、交流と余暇、ファッション意識、購買行動などについて調査・分析を行い、世代ごとの意識と行動の特徴を明らかにすることによって、世代間の生活文化度の検証を行った。
その調査の中から、高齢化社会の進展に従って、マーケティング対象として注目されているマチュア世代を取り出し、分析したものが本報告である。
マチュア世代の定義は、明確ではないし、価値観、意識、行動、年齢認識、社会からの自由度、などを総合的に加味して考えなくてはならないが、本報告では、50歳以上をマチュア世代として分析を進めた。

2 研究調査の概要と分析方法
2-1 調査方法
調査の対象は中部、近畿、中国、九州を中心とした地域の、短期大学生、四年生大学生の母親・姉妹・祖母及び一般社会人である。調査対象のマチュア世代のサンプル数は276(全体855)である。
調査方法は質問紙調査法で行った。基本的には回答者に質問用紙を配布し、郵送によって回収する方法により1999年10月~11月に実施した。
2-2. 分析方法
当初、マチュア世代を「団塊」世代(50~54歳・サンプル数100)、「戦中生まれ」世代(55~59歳・サンプル数62)、「戦前」世代(60~69歳・サンプル数114)の3つのグループに別けて集計・分析を行ったが、「団塊世代」と「戦中生まれ」世代は質問項目に対する回答がほぼ同じ割合で算出されたので、1つのグループとして再集計・分析した。
そこで、「50歳台」(以下、マチュア前期世代)と「60歳台」(以下。マチュア後期世代)の2つのグループで分析をおこなった。
グループごとに各質問項目(質問項目50)の単純集計とクロス集計、質問項目間の相関分析をおこない、生活実態、革新性、生活意識と関心、交流、情報収集、ファッション意識と行動などを明らかにするとともに、各グループをファッションに関する質問項目(流行の採用、ブランドの採用、流行の情報源、ファッションの情報源、購買前の情報収集行動、他人のファッションへの関心、他人と同じ服飾、など)でクラスター分析し、何回かの試行錯誤の結果、「マチュア前期」世代は4つのクラスターを、「マチュア後期」世代では2つのクラスターを抽出した。
3.調査結果の要約
3.1 「マチュア前期」世代の特徴
「マチュア前期」世代の約7割の人が有職者であり、子供の学費や住宅ローンから解放された時期に当たるので、高い自由裁量金額につながっている。使途先では、やはりこの世代も服飾費が多く(43%)、他の各世代と比べても最も高い結果となっている。一番大切なものに関しては、家族(56%)と健康(34%)をあげており、一番関心のあることでも健康(32%)、家族(16&)、政治・経済動向・仕事(12%)などであり、健康に対する意識と関心が高くなってきている。これは、これからの老後に対する準備を意識し始める時期であるので、健康に対する意識と今後の経済動向への関心が強くなってきている現れである。また「マチュア前期」世代になると、携帯電話を持っている人(38%)よりも、持っていない人の方が多くなり、パソコン利用者やインターネット利用者も非常に少なく、生活革新意識は弱くなり、余暇時間の過ごし方ではテレビ(27%)が一番多いが、ガーデニング(13%)や習い事(12%)の割合が高くなり、現在の生活をより快適に維持していこうとする姿勢がうかがえる。
交流に関しては、交流範囲は広く浅く(45%)、多くの人が地域の人と会話(72%)をしており、地域との交流が活発なことを示している。余暇を過ごす人は家族(38%)が最も多いが、子育ても終わり、自分一人(27%)や友人(27%)と過ごす人の割合も高くなってくる。
情報収集行動は、ファッション・流行の情報源は雑誌(28%)と店頭陳列(28%)の比率が高く、続いてテレビ(15%)、カタログ(14%)である。ファッション意識では、若い世代に比べると個性的(27%)だと思っているが、自信のない人が多く(82%)、他人のファッションへの関心(58%)は低いが、同じファッションには抵抗感(69%)を持っている。流行の採用(革新者5%、早期採用者23%)に関しては他の世代よりは高くなっている。
世代間の相関分析をみても、「団塊ジュニア」世代と同居している人は団塊ジュニアの意識行動に近く、「高齢」世代と同居している人はその世代の意識・行動と類似している。また、現在の経済状況、家庭・生活環境によって、意識・行動に2極分化の傾向がでている。ある程度の豊かさを享受しているグループと堅実な生活をしているグループに別けることができそうである。
そこで、ファッション意識と行動に関する質問を用いて、クラスター分析を行い、次の4つのタイプを抽出した。
   第1のタイプは、流行のファッションをすぐに取り入れる革新者が21%、早期採用者が52%であり、気に入ったブランドがあり(69%)、自らファッションのコーディネートを行い(91%)、自分のファッションは個性的(62%)で自信を持っている(52%)。ファッションに関しては革新的採用者であり、ファッション追求型といえるタイプである。このタイプは、自由裁量金額も多く、第一の使途先も服飾が62%と高く、現在の生活への満足度も高く(83%)、欲しい豊かさは、経済的豊かさ(31%)と時間的豊かさ(31%)である。余暇も鑑賞・交際(同率17%)・習い事(14%)・などが高い比率になっている。流行・ファッションの情報源としては雑誌(72%)、テレビ(24%)に集中している。このタイプは全体の18,2%である。
   第2のタイプは、流行のファッションの採用は早期採用者が38%、後期採用者が46%であり、気に入ったブランドがあり(54%)、コーディネートを自分でする人が65%であり、自分のファッションの自信・個性的に関する回答は、この世代の中では2番目である。ファッションには関心が高いが、ファッション追求型ほどには積極的に流行のファッションを取り入れるのではなく、仕事とファッションに関して気にする割合(64%)が一番高いことに示されているように、ファッションに関心は払っているが、常識的なファッション意識があり、トラッド型であるといえる。このタイプは自由裁量金額もタイプ1の次に多く、第一の使途先は服飾が半分を占め、次に、習い事(27%)である。生活の満足度は高く(79%)、欲しい豊かさは精神的豊かさ(49%)である。余暇生活の満足度も65%であり、ガーデニング(30%)、習い事(21%)を楽しんでいる。流行・ファッションの情報源は店頭陳列(64%)が最も高く、ついでカタログ(14%)となっている。このタイプは23.2%である。
   第3のタイプは、流行のファッションの採用に関しては、後期採用者61%、遅延者が37%であり、気に入ったブランドはなく(86%)、他人のファッションも気にしない(75%)、とファッションには関心が薄い。一方、ファッションと仕事に関しては気にする方が多く(53%)、実用性を重視し(34%)、購買店舗ではスーパーの割合がクラスターの中では一番高く、店舗選択の基準も価格(32%)が二番目にあげられており、ファッションに関しては実質・常識型である。このタイプの自由裁量金額は中位であり、生活の満足度も高く(82%)、一番大切なものは家族(54%)と健康(32%)に集中しており、一番の関心事も家族(20%)と健康(39%)になっている。余暇の過ごし方はテレビ(37%)、交際(16%)の順位なっており、良妻賢母がイメージされる。流行・ファッション情報源は、店頭陳列・雑誌・カタログがほぼ同じ割合である。このタイプが全体の47,8%である。
   第4のタイプは、流行のファッションの採用は後期採用者が53%、遅延者が35%であり、気に入ったブランドはなく(76%)、ブランドにはこだわらず(100%)、ファッションのコーディネートは考えない(29%)が高く、自分のファッションには自信がなく(65%)、個性的ではなく(88%)店舗選択理由も価格(35%)であり、ファッションについては全く無頓着であり、ファッション無関心型といえる。このタイプは、自由裁量金は最も低く、使途先も飲食代が一番高く(24%)、他は分散している。生活の満足度もこの世代の中では最も低く(65%)、求める豊かさも経済的・時間的・精神的に3等分される。余暇生活の内容はテレビ(35%)が1位であり、ついで旅行(18%)である。流行・ファッションの情報源はテレビ(88%)である。このタイプは10.7%である。
3.2 「マチュア後期」世代の特徴
   この世代は「団塊ジュニア」に次いで自由裁量金額を多く持っており、使途先は、服飾費が一番であるが、この世代の特徴として、旅行(20%)、習い事(15%)への支出が他の世代と比べて高く、6割を超える人が無職であることから、自由な時間を利用して、ゆとりのある生活を楽しんでいる。また、一番大切なものとして健康(55%)、一番関心のあることも群を抜いて健康(48%)となっている。生活革新機器の利用度は当然のことであるが、大変低くなっている。
交流に関しては、広く深い付き合い方が多く、また、7割の人が地域の人と積極的に会話をしている。余暇が充実している割合(79%)も世代間で一番高くなっており、習い事(24%)、旅行(14%)、ガーデニング(14%)などを楽しんでいる。余暇を一緒に過ごす人は家族(42%)、一人(29%)、友達(25%)、と様々になっているが、これは置かれている家庭環境によるものであろう。
情報収集行動に関しては、流行・ファッションの情報源は店頭陳列(41%)、テレビ(20%)、雑誌(19%)である。また、この世代の情報源の特徴としては、新聞を読む時間が長い人が多く、自由な時間が最もある世代であるので、身近な情報源として新聞を活用している。
   ファッションに関しては、世代間比較をすると、自分のファッションは個性的であり(32%)、自信があり(22%)、他人と同じファッションを嫌う割合(59%)が最も高くなっている、反面、流行を取り入れない人の割合(80%)も高く、ファッション商品を購入しない人も1割以上いる。
以上が、マチュア世代後期の全体的要約であるが、マチュア世代前期と同様の分析を行い、2つのクラスターを抽出した。
   第一のタイプは、流行のファッションの革新者が26%、早期採用者が30%であり、気に入ったブランドがあり(48%)、自らファッションのコーディネートを行い(78%)、自分のファッションは個性的(48%)で自信があり(48%)、他人のファッションを意識(66%)、同じファッションすることは嫌う(85%)。ファッション追求型のグループといえる。有職者が約半分おり、携帯電話の保有率も高く(26%)、自由裁量金額も高く、一番の使途先は服飾(41%)が一番多く、続いて、旅行(22%)である。生活の満足度も高く(89%)、関心事は健康(41%)、趣味(19%)、仕事(15%)である。余暇も充実しており(92%)、過ごし方としてはテレビ・習い事(同率19%)、ガーデニング・旅行・交際(同率15%)など多様である。ファッション雑誌を読み(48%)、流行・ファッション・の情報源としては店頭陳列(37%)、テレビ(26%)、雑誌(19%)を利用している。このタイプは全体の23.9%である。
   第二のタイプは、後期採用者が48%で、遅延者が37%で、ブランドへの関心はなく(91%)、コーディネートは自分でする(55%)、ついで販売員(21%)であり、店舗選択理由は価格(30%)、自分のファッションに関しては自信がない(85%)、個性的でない(64%)であり、また、他人のファッションへの関心はなく(64%)、ファッションに関しては実質・常識型といえる。自由裁量金額では第一のタイプよりは低く、主たる使途先は服飾(27%)、旅行(21%)、習い事(17%)である。生活に満足している割合は83%、欲しい豊かさは精神的豊かさ(42%)である。余暇が充実している人は75%で、習い事(26%)、テレビ(24%)、ガーデニング・旅行(14%)である。流行・ファッションの情報源は店頭陳列(41%)、雑誌(20%)、テレビ(19%)である。

4 簡単な要約
   マチュア世代を「マチュア前期」世代と「マチュア後期」世代に別けて、ファッション意識と行動を中心に分析をしたが、マチュア世代のファッション意識・行動も一様ではなく、「マチュア前期」世代は、ファッション追求型、トラッド型、実質・常識型、無関心型に、また、「マチュア後期」世代は、ファッション追求型、実質・常識型に細分化することができる。それぞれのグループが流行・情報の第一の情報源とするメディア・媒体には大きな相違があることが明らかになった。ファッション商品を提供する企業は、自らがどのグループを販売対象にするかを明確にして、広告・宣伝活動を行わなければならない。

(参考文献)
飽戸 弘 「売れ筋の法則」筑摩書房,1997。
*本報告は、ファッションビジネス学会関西部会ファッション・マーケティング・ワークショップ(主査:成安造形短期大学 早川雅明)の共同研究のデータを活用したものである。








































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